著名なオペラ歌手、ME音の青柳素晴さん江口二美さんからオペラ和コンサートの出演依頼が飛び込んだ。
義仙会は、もとより広く武家文化を学び自身が習得することで後世に継承することを目的として活動する会である。
後先も考えず、即二つ返事、喜んでお受けした。
(公演フライヤー)
義仙会目黒藩邸にて、歌手敦盛役の青柳さんと二美さん、演出家の三浦さん、武者 敦盛役の林、
武者 直実役の長塚の5名で初の顔合わせとミーティング。 交えた談笑が気合を芽生えさせやる気が馳せた。
源平時代の「平敦盛と熊谷直実(後に僧侶の蓮生)」をテーマとした曲に合わせて演じることとなった。
さて何を演じるか。
義仙会は刀をはじめ、各伝統武術や茶道、和装着付けを修練するが、殺陣の集団ではない。
ならば小細工はせずに正面から武術を演じようと。
演出家さんからおこなうべく演技の指示は一切なく、歓談の中、一ノ谷の合戦、須磨の海岸での名場面などについて温かい雰囲気の中楽しく話し合った。
(演出家 三浦安浩氏に実際に武具に触れてイメージを膨らませていただきました。江口さん撮影)
後日のリハーサルまで演じる内容については何らの指示もなかったが、源平時代の合戦の模様と須磨の海岸での敦盛・直実の名場面が頭の中をよぎっていた。
(青柳江口夫妻とバリトン歌手の久保田さんとの衣装合わせのあとの懇親会)
源平時代の合戦といえば弓馬での戦い、一騎打ちの戦。弓は欠かせない。
折しも2020オリンピックパラリンピックの公式応援メッセージを日比谷野外大音楽堂にて収録(8/1)するため義仙会士は戸山流弓馬会 籏谷会長と榊師範の指導の下で弓術の心得を授かった。
弓合戦の場面をおこなおう!
そして可能ならステージで矢を射ろう!
本番中の舞台で矢を実射することは、機材を破壊するリスクがあるため全国でも初の試みかも知れない…
…ならばなおさら。
(演出家、舞台監督、音響照明などの制作スタッフ陣の前で舞台を想定し実際に矢を射ってみる)
義仙会のテーマは可能な限り時代を忠実に再現すること。着用する甲冑は甲冑師の手による重量のある現代甲冑である。大鎧を纏って稽古、リハーサルそして本番に臨んだ。
(全員真剣に演出家の話を聞いています)
(春雨寺ホールでの稽古。熱のこもった稽古が続きました)
(1幕2幕通し稽古)
(我々は毎回甲冑完装で稽古に臨みました)
(いつも大所帯)
(どの瞬間も全力で。稽古終わりはいつも疲弊していました)
合戦の場面では真剣同様の大きさと重量の金属刀で斬り合うことにした。
我々は殺陣の集団ではない。
斬り合いながら無言で立ち位置の誘導をおこなうため、時折太刀が手をかすめ血が滲んだ。
息が切れて汗が吹き出る。そこからが実際感が出はじめて斬り合いの真骨頂となる。斬り合いは命のやり取り、精神的にも肉体的にも重たいものがある。
太刀を合わせる度に全員タイミングの見極めが冴え、腕や体の使い方が良くなっている。
曲と歌、オペラに馴染むよう何度も何度も聴いて演武の戸惑いを一つひとつ減らしていった。
(本番当日、快晴の練馬文化センター)
そして本番… 舞台の入り直前、母衣の着付け役がいない!…など凍りついたその瞬間、神が降りて来て助けてくれた。
全心全力で臨んできたご褒美であろうか。
本番の舞台は今までで一番の出来であった。
人生は短い、やれることは限られている。異なるジャンルの世界との交わりで得るコトは大きい…
抱えきれないほどの成長のための光の粒が体に染み込みフィナーレを迎えた。
(終演後楽屋にて)
記 / 長塚
本番での舞台写真は、また後日掲載させていただきます。
お楽しみに!
この後は、本番当日の楽屋風景など
今回和装の衣裳も担当していましたので、我々の楽屋は衣裳部屋でもありました
運び込まれた甲冑たち
本番当日も細かな調整は続きました
歌手の方たちへ着付けをしたり、自分たちも着付けたりとにわかに忙しくなってきました
鎧完装でもお裁縫
長塚会長による、主役敦盛の髷結い
長塚会長もメイク
そろそろ本番